新しい収益認識基準の適用について

中小企業診断士の北垣謙です。
新型コロナウイルスの影響で大変な時勢ですが、皆で力を合わせてこの苦難を乗り越えていければと思います。

今回は新しい収益認識基準について簡単に説明します。
従来日本では収益の認識は実現主義によるものとされていましたが、国際的に包括的な会計基準の導入が進んだことにより、財務諸表の比較可能性の観点から、日本でも新しい会計基準の導入が行われることになりました。
新しい収益認識基準の適用時期は2022年3月期からになります。

また監査対象法人以外の中小企業については原則対象外で、従来どおり企業会計原則によることが認められます。
私たちには関係ない先の話と思われるかもしれませんが、取引には原則相手があり、相手が適用になれば中小企業でも対応が必要になりますし、契約書・システム対応はその前の年度から準備を進める必要があります。

 

新しい収益認識基準では、取引を5つのステップに分けて契約を識別します。

ステップ1は顧客との契約の識別、ステップ2は履行義務の識別、ステップ3は取引価格の算定、ステップ4は取引価格の配分、ステップ5は収益の認識になります。

追って説明しますと、ステップ1として口頭・慣行を含め契約が存在することが前提です。
ステップ2は、契約における履行義務を識別し、個別に収益を認識する単位を決定します。
ステップ3は、取引価格の算定で、値引き、インセンティブ、返品なども予測して見積ります(返品調整引当金は廃止)。
ステップ4は、ステップ2で識別した履行義務に、ステップ3の取引価格を配分します。
ステップ5は、ステップ4で各履行義務に配分された価格に基づき、義務を充足したときに収益を認識します。
簡略化した事例を紹介しますと、取付、2年間のサポート付きで本来110万円の商品を期間限定100万円で販売したとします。

収益を認識する単位を決定して履行義務を果たす度に収益を認識するため、商品・取付が60万円でサポートが1年20万円として取引を配分した場合、1年目80万円の取引、2年目20万円の取引として認識することになります。

このように一つの契約に含まれる様々な取引を分解する必要があることや、今まで場合によって費用として認識していたものを売上の減額として会計処理することが求められることから、契約書と取引の実態が異なっている場合や、追加の財又はサービスを取得するオプションを無料で付与しているような契約は経理処理が煩雑になり、今後契約の見直しを求められることも想定されます。

さらに、本人か代理人かの判断と言い、他の取引業者の関与を判断して販売総額か手数料部分だけ計上するか会計ルールが明確になったため、企業の売上高も変動する可能性があります。
以上ほとんど影響がない業種がある一方、業種によっては対応が複雑と感じます。

最後になりますが、今回のコラムは私が市販書籍を読んでまとめた私見で、例外もありますので、実務においてはご注意ください。

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