自然から学ぶ「素振り」のすすめ

今年の8月は雨の多い月でした。特に11日以降の旧盆期間は記録的な大雨となった地域が多く、岡谷市では人的被害も発生してしまいました。
被災された関係者の皆様にまずはお見舞いを申し上げます。

近年多発する豪雨災害。テレビで放映される映像を見るたびに、またかと同じような光景を繰り返し見ている気がします。
確かに近年は豪雨による災害が多発するとともに、災害規模も激甚化してきています。
このような状況を受け国は国土強靭化計画を策定しており、令和4年度からの5か年計画では地震や火山災害も含めた防災・減災対策に7兆円台半ばの予算を要求する予定です。
更にこの計画は国土強靭化地域計画として県および市町村にも策定が求められており、すでに策定が完了した自治体もあります。どのような計画になっているのか興味が湧きます。

また、中小企業強靭化法が2019年7月に施行され、防災・減災に対する中小企業の取組を支援する制度が出来ました。本法に基づいて「事業継続力強化計画」を策定し国の認定を受けた中小企業者は、税制・金融・補助金採択などで優遇を受けることが出来ます。
事業継続力強化計画は「簡易BCP」ともいわれ、いわゆるBCP(事業継続計画)ほど小難しいものではない防災・減災のマニュアルです。

さて、自分の防災に対する意識はどうだろうか?
8月中には夜中の緊急情報アラームで何度か目を覚ましました。また、毎日降る激しい雨で近くの川が増水しているのを見て、不安に駆られることもありました。
ハザードマップを見て自分がどのような場所にいるのかも確認しています。また、今年の5月に改訂された5段階の避難情報【警戒レベル5:緊急安全確保、同4:避難指示、同3:高齢者等避難、同2:大雨・洪水・高潮注意報、同1:早期注意情報】も認識があります。
でも「大丈夫だろう・」という意識があり、避難準備などの具体的行動には達していません。
豪雨災害の報道でも、避難指示やハザードマップを確認していたにも関わらず避難が遅れ被災された事例をよく見ます。

なぜ、避難指示やハザードマップがあっても避難行動に結びつかないのか?
それは、これらが他人事の情報であり、自分事として認識できていないからだと思います。
ハザードマップは過去の記録をもとに作られており、昨今の豪雨の激甚化は「想定外」になっていると認識しておくことが必要です。
また、紙ベースで平面図のため実際の立ち位置をビジュアルに認識することが難しいです。
この機会にハザードマップを持って散策がてら少し高台に行き、自分のいる土地を鳥瞰することをお勧めします。
後背地の山や丘には山ひだがあり、その下にはなだらかな扇状地が広がって美しい景観をなしていることでしょう。でもその山ひだと扇状地は太古からの土砂崩れの歴史です。
また、平地を流れる川は両岸に肥沃な田畑をもたらしていることでしょう。でもそれも太古から氾濫を繰り返してきたことによる賜物です。
地形に刻まれた情景とハザードマップを重ね合わせて見ることにより、自分がいる場所にはどのような危険が存在しているかの認識ができると思います。
避難情報はレベルごとに、その時に自分はどうするかを自分事として決めておきましょう。

避難しても大事には至らず、「空振り」になることもあります。でもそれは無駄ではなく訓練としての「素振り」です。9月はまだ台風シーズンです。この機会にハザードマップを持っての散策と、避難情報が出されたら「素振り」をしてみてはいかがですか?

中小企業診断士・防災士  片桐文夫

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